小隊の日常。
釣り日和
本日は晴天なり、本日は晴天なり。
絶好の“釣り日和”かと思われる。
「隊長……かかったぜぇ」
「ん。奴さん、見事に食いついてきたでありますなぁ。引き続き慎重に動向を見守るであります」
「りょうかーい」
ここは日向家、日の当たらないじめじめとした部屋。
「なん……だと……? ちょっと待ってちょっと待って、どうしてコイツが出てくるワケでありますか!? ね、もしかしてコレって何かのフラグ……?」
「いや、こいつは強制イベントだなぁ。てゆーか、迂闊に選択肢選んだらバッドエンド直行て感じ? くっくっくっく……」
常にじめじめと湿っている部屋に響く、甲高い悲鳴、陰湿な笑い声。
部屋の中心にはデスクトップパソコンに向き合う緑色と黄色のカエル。脇にはいつでも再開できるように簡単に片づけられたガンプラの箱。
「げ、げろげろ……これはイカンでありますな……あぁ、いったいどうしたらっ……!」
ガマ星雲第58番惑星・宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊隊長、ケロロ軍曹は、頭を抱えて何やらぶつぶつと呟いていたものの、おもむろに拳を握りしめて目の前のモニターを睨み付けた。
「おのれ、いくら主要人物だからって、こうもしゃしゃり出て来られると迷惑であります! 大体、今はお前さんの相手をしている暇はないのでありますが……ええい、こうなったら正々堂々正面から立ち向かい、この状況を乗りきってみせるッ!」
「って、何をやっとるか貴様ぁぁ!」
「ゲロ!? やっば、ちょ、曹長、録音止めて録音っ」
「ちっ、仕方ねぇなぁ」
住人の持つ湿気も相まっていっそうじめじめとした部屋は蛍光灯で文化的(かつ非健康的)に煌々と照らされ、その部屋の中心ではケロロ軍曹とクルル曹長がパソコンのモニターを囲んで何やら作業をしていた。
新しい侵略作戦の相談でもしているのだろうか、というギロロ伍長の淡い期待を見事に裏切り、その小さな手には少々余るサイズの地球製ゲーム機のコントローラ、その大きな頭にはジャストサイズのヘッドセット。
「んもう、ちょっとギロロ伍長! 我輩達は今、大事なシミュレーションをしていたんであります! 部屋入るときはノックするようにって扉に張り紙しといたでショ!?」
「ノックに気付かなかったのは貴様だ! それにいったい何のシミュレーションをしていたというのだ、何のっ」
吐き捨てるように言って、睨み付ける視線の先にはパソコンのモニター。
そのモニターには一人の地球人少女のイラストが映っている。
清楚な黒のロングヘア、ぱっちりと大きな瞳は潤み、頬はほんのりと朱に染まり。
深刻そうな表情の下には枠に囲まれた選択肢、その内容は――――
「えっと……疑似恋愛?」
「どこが大事なシミュレーションだ、この大馬鹿者! ポコペン人の女に告白されて何が嬉しいというのだ、そんなにシミュレーションがしたいのなら模擬戦闘(バトルシミュレーション)でもしてやがれ!」
「いやあのネ、これはその、違うんでありますよ? 別にこのゲームが大事ってんじゃなくて、つか、お前もこうしてポコペン製の恋愛シミュレーションやればもう少しくらい夏美殿に――あ、やめて、銃はヤメテ」
両手を上げて降参のポーズを示しながら、ケロロは突き付けられた銃から逃げるようにくねくねと身を捩る。その姿に眉間のしわをより深く刻ませたギロロは、ケロロに銃を向けたままクルルに視線をやった。
「……なんすか」
「こんな下らんものを見せるために、俺は呼びつけられたのか?」
「まぁまぁ先輩……まずはこれでも見てくださいっすよ」
勿体つけてクルルがパソコンを操作すると、ゲーム画面の代わりに地球製の動画共有サイトが表示された。そして更に何か所かクリックし、画面をすすめていく。
これこれ、と示されたマウスポインタの先には。
「……《ミリオタ2人が美少女ゲームを実況! 4週目》……?」
「そーであります。せっかく調子よく録ってたってのに、お前さんが急に入ってくるから止めなきゃいけなくなっちゃったでありましょうが。狙ってるキャラにデートの約束を取り付けられたところで別の子から告白されるしさぁ、今日は邪魔ばっかり入るでありますなぁ……クルル、どうするよ?」
「オッサンの声は迫力あるし、同士(ミリオタ仲間)の乱入があった、とでも言って続きから改めて録画すりゃどうにかなんだろ。つか華麗な責任転嫁だなぁオイ。恋愛関係ドロドロにしてんのはアンタの選択肢の選び方だろーが。とりあえず今の状態じゃセーブも編集もできねぇよ、さっさと選んじまいな隊長」
「う~……決めかねるでありますなァ」
何事もなかったかのように、いつも通りの様子のクルルとケロロ。
しかしその後ろでは、軽く自失気味にあったギロロの体がみるみる赤に染まっていった。一気に沸点を通り越し、怒り心頭、といった様子でケロロを睨み付けると、そのまま首を掴んでガクガクと前後に揺すりながら部屋が振動する程の大声で怒鳴る。
「貴様っ、こン……っの、ど阿呆がぁーー! 誇り高きケロン軍の軍人が、自分をミリオタと称するなど、ふざけるのも大概にしろ! 今日こそ貴様の性根を叩き直してやる、そこに直れぇええ!」
「だ、だから違うっての赤ダルマ! いや違わないんだけど、違うンであります! とにかくお前はもうちょっとボリューム落としてもうちょっと落ち着いて、そんでこの動画見ろってば! クルル、とりあえずコレ選んじゃうから、ここんとこ後でアフレコねー!」
首を絞められつつも大声で言い返すと、ケロロはぬるりとギロロの手から逃れた。そしてゲーム画面を開き、軽く逡巡しつつコントローラを操作して、選択肢を選んだ。
にやり、と、一瞬クルルが笑ったことに、あれ、我輩やらかした?と、軽い後悔を覚えながらも、続く会話をボタン連打で流してセーブ。そして改めて動画サイトを開き、いくらか画面を進めてから再生ボタンを押した。
「えーっと、そう、これこれ。この2週目がいきなりスゴカッタんだよねぇ。ほら見て」
『やっふー! どうもー、“軍曹”でっす! 今日も実況プレイいっちゃうでありますよっ☆』
『くーっくっく、“曹長”だぜぇ。前回は散々フラグ折りまくってくれたからなぁ、今日も期待してるぜぇ隊長……くっくっく……』
普段と変わらずテンションの高いケロロの声に、これまた普段と変わりなく陰湿なクルルの笑い声。何が悲しくてこんなモノを見なけりゃならんのか。頭痛を感じ、うんざりと頭に手を当ててやり過ごそうとしたギロロは、あることに気付いて注目する。
「おい……妙な編集をしているな? 何か文字が流れているが、これでは画面が見えんだろう」
ゲロ? と、ケロロは目を瞬いたが、すぐに得心した様子で首を横に振る。
「これは我輩じゃないでありますよ。このサイトはねー、動画を見てる人が一言二言コメントを投稿できるんであります。んで、その投稿されたコメントがこうやって動画の上を流れんの。文明の遅れたポコペンらしい簡素な形式ではありますが、みんなで感想言い合ったりできて結構楽しいのヨ、これ」
「……やっぱり遊んどるだけなんじゃないのか、貴様」
ケロケロ、と軽やかに笑うケロロをギロロは睨み付けていたが、相変わらずスルースキルの無いやつらが釣られてんなぁ、この程度の煽りに食いつきやがって……とクルルが呟いたのに気づき、改めて画面に目を向ける。
感想。なるほど、感想と言えば感想なのだろう。
だが一方で、ただ相手を煽るためだけのような挑発的な言葉も多いように見受けられた。
議論と呼んだ方が適切なのではないか、と思う程白熱した文章の応酬がされているかと思えば、議論と呼ぶには幼稚な悪口や、まず意味を為しているとも思えない不可思議な言葉もある。翻訳器でも訳しきれずに読み取れない単語や、そもそも単語未満の文字――ポコペン人がwww(ワールドワイドウェブ)を大量に流すことで何を主張したいのかなど、到底理解が及ばない――も多く含まれており、まるで暗号の解析でもしているようだとさえ思う。ともかく、一部で不毛な言い合いがされているようであることは見て取れた。
なんでわざわざヒトの作った動画の上でこんなことを、と苦い顔をしているギロロに向かってクルルは口の両端を吊り上げ、まぁ“釣り”を生きがいにしてるような連中っすからねぇ、と陰鬱に笑う。
「だから。今なんとかしてるとこなんスよ、センパイ」
くっくっく、と笑ってから、クルルはいつの間にか操作していた愛用のノートパソコンを軽く持ち上げてみせる。
そのまま自分のパソコンの操作を続けつつ、いくつかのケーブルをケロロのパソコンへと繋げた。
「隊長、こないだの撮りだめしといたやつ。あるよな? そっち、頼むぜェ」
「了解であります! 任せなさいっ」
ケロロも何やら操作を始めたようだ、と、やっている事を理解できないままギロロは2人の行動を眺める。クルルは先程より更に早い動きでキーを叩いており、パソコンの画面は流れるような速さで進んでいく。
セキュリティ。認証。解除。認証。解除。解除。ほんの僅かも手を止めることないままいくつかのパスワード認証を通りぬけると、クルルは一際楽しそうな笑みを浮かべた。
「こっちは準備完了だ」
「我輩もオッケーであります。いくでありますよ、クルル曹長! ほい、投稿っ」
ケロロの作業もひと段落ついたようで、ぽちっと、と掛け声とともにケロロがエンターキーを入力する。
しばらくすると画面が切り替わり、動画の投稿が完了したことが伝えられた。
「く~っく、予定時間より18分オーバー……奴さん待ちかねてんだろうなァ」
「その方がいいでありましょ。少しくらい焦らしてあ・げ・る、であります。さて、後は――」
ここでくるり、とギロロに向き直ると、ケロロは笑みを浮かべる。
その笑顔はさながら、仕掛けたいたずらに誰かがひっかかることを期待している子どものようで。
「ギロロ伍長、いつでも出られるでありますよね?」
「……戦闘か?」
「どっちかってーと逮捕でありましょうかな、目的は。戦闘必至だとは思うけど。まぁうまく釣れればの話だけどネ」
にこにこと笑うケロロに、ギロロは本日何度目かのため息をついた。
「まったく、相変わらずそうやって“楽しいこと”は勝手にすすめやがる。いい加減説明しろ、ケロロ」
ケロロは、おお、そうでありました、と手を叩くと改めてパソコンに向き直り、ギロロにも画面を見るように促す。
「クルルがさっき言ってたまんまでありますが、コイツらは、このポコペン製のシステムに居座り、わざわざ過激な言葉を使って他の人が過剰反応するのを今か今かと待っているんであります。言ってみれば、さながら釣り針を垂らした釣り人ってとこ」
「ふむ」
「んで、この釣り人の中に――ちょっと“厄介なの”が混じっててネ」
そこまで言って、更新ボタンをクリック。
新しく現れた画面には、先程とは明らかに変わっている点があった。
「ほら、これ。さっき投稿したばかりの動画なんでありますがね、もうコメントがついてる」
なるほど、見れば、数は多くないものの、それなりの数のコメントが投稿されていた。しかし、その内容に思わずギロロは眉をしかめた。
「だが内容は酷いもんだな……詐欺だのなんだの。責任をとれ? 貴様、いったい何をやらかしたんだ」
「絶対にこの時間に投稿するって予告しといたのに遅刻したから怒ってんのヨ、このヒト。んで、このヒトはさっき見せた2週目の動画を散々荒らしてくれたヒトと同一人物であります」
「……ポコペン人ではないのか」
「まぁね」
そろそろわかってきたかしら、と、ケロロはギロロにウインクをしてみせる。
ケロロのウインクを綺麗に無視して、ギロロは腕を組んで考え込む。
「こいつらが、厄介な……トラブルの種、か。ポコペンに来てヒトの作ったもんを荒らしまわっとるわけだな」
「そうそう。で、データ辿って、今、クルル曹長が逆探知で居場所を――」
『隊長殿』
唐突にドロロ兵長の声が響く。
ケロロはすばやく通信機を構えると、何やらクルルとアイコンタクトを取りながら応答した。
「ドロロ兵長、首尾はどうでありますか」
『クルル殿から送信された建物に来ているでござる。少々、大所帯でござるな』
「お前がそう言うってことはよっぽどねェ」
『複数の種族が見られるでござるよ。おしなべて敵性種族ばかり、確か同盟関係には無かった筈と記憶しているでござるが……協力し合っているようではござるな』
「今から行かせることになるけど、ギロロ、要る?」
『それは心強い、是非とも」
「了解であります。……という訳でありますので」
通信を切ると、くるり、とギロロに向き直り、ケロロは姿勢を正した。
「ドロロ兵長に協力し、“トラブルの種”をだまらせてくるであります、ギロロ伍長。ポコペン人がポコペンの文化の内側で、自分たちで釣って釣られて遊んでいるうちは構わないでありますが、我々他の星系の種族がそれを煽り立て文化に介入することは立派な宇宙法違反。ちょっとしたツテで宇宙警察と協力態勢をとることになったんで、クルル曹長と一緒に“釣り針”としてこの動画を垂らしていたのであります。……今頃、釣ったつもりが逆に釣られていて、慌てているでありましょうなぁ」
いやしかし、今行かせているのはドロロだし、釣り針をしっかり飲み込んでいることにも気づいていないでありましょうか、と一人ごちてから、ケロロは続ける。
「奴さん、ちょっとはしゃぎすぎってモンでねぇ……全宇宙対象の指名手配が出ているのが数名、ポコペンに潜伏していることがわかっているであります。今回こうして目立つ形で餌に食いついてくれて、こちらも話が早いというもの。宇宙警察には話を通してあるし、頃合いを見て我輩から連絡、引き渡しがスムーズに済むよう手配しておくでありますよ」
「敵性宇宙人と言ったな。種族は?」
「我輩達が確認できているのはヴァンダリン星人だけであります。あとはドロロ兵長に聞かないとわかんないネ」
敵対種族にも様々な種類がある。その中でもヴァンダリン星人は、サイバーアタックを主な手段とする侵略型宇宙人である。性格はやや攻撃的、最近は法に抵触しかねない程の危険な手段をとることが増えて、警戒の呼び掛けが全宇宙的になされるほどである。ケロン星とは昔から敵対関係にあり、つい先日も本部から注意の通達が来たばかりであった。
とりあえず頭数だけ揃えてみたワケか。
武器の確認をしつつギロロが呟く。
ヴァンダリン星人は頭脳戦になれば油断できない相手ではあるものの、直接戦闘に向いている種族ではない。人数だけ集めたとして、ギロロとドロロに対抗できるだけの戦闘力を備えたということも無いだろう。それに、通信機越しのドロロの雰囲気からは、他に危険な種族はいないように思われた。まぁ、詳しいことは直接ドロロとやり取りすれば足りるか、と、ギロロは愛用の銃の感触を確かめる。
「敵の潜伏場所の詳細はお前のソーサーに送っておくでありますから、準備ができ次第出撃せよ、ギロロ伍長」
「了解!」
ギロロは携帯している各種武器の確認、点検を手早く終え、敬礼を返した。
そうしてそのままケロロの部屋を飛び出して行った。
「お、ギロロ、ドロロ。おっかえんなさーい!」
「只今帰還したでござる、隊長殿」
「おいケロロ! 貴様、もう少しきちんと宇宙警察に話をつけておかんか! イイカゲンなことをしおって、俺たちまで逮捕されるところだったぞ!」
ギロロが出て行ってから、しばらく静かにニッパーの音のみが響いていたケロロの部屋が、おもむろに活気を取り戻す。
ギロロに胸倉をつかまれ、なんとか完成間近のガンプラだけは無事なところへ避難させようと暴れるケロロ。普段はドロロが仲裁に入るが、今は横でため息とともに眺めているだけだ。さすがに自分たちまで宇宙警察に逮捕されかけたので、間に入ってなだめる気にはならないらしい。
戦闘による疲労よりも、お役所仕事の宇宙警察とのスレチガイの方が遥かに疲れる。そもそも自分達を代表して交渉にあたるのは、隊長のケロロのはずだ。etc. ひとしきり怒鳴り散らすことで尻拭いをさせられた鬱憤をある程度晴らしたのか、ケロロを放り投げてギロロも床にどっかりと腰をおろした。
そして、気になっていたことをふと思い出す。
「しかし、どうしてお前たちがヴァンダリン星人を相手にすることになったんだ?」
本部から来ていた通達は、毎年恒例の一般的な注意喚起のみ。
いくらケロロ小隊がポコペンにいて、たまたま同時に指名手配犯がポコペンに潜伏したと言え、それだけの理由で任務遂行中の軍隊がわざわざ宇宙警察と協力することはまず無い。
すると、ケロロはよくぞ聞いてくれました、という表情で大げさに手を広げて見せた。
「それがね、ちょっと聞いてよギロロ! 最近、我輩渾身のホームページは荒らされるわ精根込めて作った動画は荒らされるわで、もー散々だったんであります! それでクルル曹長に調べてもらったら、こいつらのアタックだったみたいで」
おまけに我輩のホームページ経由で基地のメインコンピュータに侵入しようとしたらしくてさ、ねぇクルル?と、ケロロは肩をすくめる。
「まぁ、俺様のシステムの入り口にも到達できねェ程度のアタックだったんで、アタック自体はあっという間にはじいてやったけどよぉ。隊長が仕返しがしたいっていうし、本部からの通達もあったし、お遊び程度とは言え攻撃を受けたんでね。本部から許可とって、ひと掃除しとくことにしたんスよ……くっくっく~」
それに、と横からドロロの声が続く。
「拙者の武呂具も攻撃を受けた故、ギロロ殿よりも先に潜行していたでござる。……あぁ、せっかくの植樹の呼び掛けが……」
成程、珍しくドロロに先に話が通っていたのはそういう訳か、とギロロは納得がいった様子で頷いた。隣ではドロドロ、と暗いオーラが出始めているが、正直なところギロロは植樹には興味も関心もないので放っておくことにする。
と、不意に通信機から軽やかな声が聞こえた。
『あ、軍曹さん? モモッチのお屋敷のコンピューターシステムも回復したですぅ!』
「おお、タママ二等、そちらも首尾は上々のようでありますな」
『ばっちりですぅ~。謝礼の方もばっちりだってポールが言ってるですぅ」
「謝礼? ……隊長殿」
純粋な善意で西澤家を助けたと思っていたドロロは聞きとがめ、渋い顔をする。
ケロロはあわててギロロに救いを求める。
「だって、そりゃ、なんも得られるものも無しにポコペン人の手助けなんてできないっしょ! ねぇギロロ?」
「さて、俺は最後まで話を知らされていなかったからな、何が何やら」
「ちょっと、お前さん何拗ねてんのよ!」
と、ここでタママも超空間移動でケロロの部屋に合流してきた。
ただでさえ騒がしかった部屋が一層にぎやかに――いや、にぎやかを通り越してやかましくなったところで、ギロロがひとつため息。
「……まぁなんだ、この作戦のためだったというのだな」
「へ? 何が?」
「ソレの事だ」
イヤそうな顔で指差した先、そこには――
「あ、軍曹さん、更新分アップしたんですね! ボク結構楽しみにしてるんですよ~。ほら、前のシリーズの時も、そりゃもうひどい――」
「しーっ! た、タママ二等、その話は後で……はっ」
「……前のシリーズ、だぁ?」
ギロロからまた赤いオーラが立ち上っている。
西澤家にも攻撃の手が伸びていたのならば、モタモタとしていたら先に敵性宇宙人にポコペンを侵略されていたかもしれない。今回ばかりは迅速に動いたケロロとクルルに文句のつけようもなさそうだ――などと、珍しくケロロに対する評価が上がりかけた矢先に、折れ線グラフは急降下。
ついでにギロロの体温は反比例して急上昇。部屋に熱気が立ち込める。
「どういうことだ……貴様、まさか侵略作戦も考えずに毎日毎日こんなことをして遊んでいたというのでは無かろうな」
「いや、だからネ、まぁまずは話を……」
「この馬鹿者がーーー!!」
ケロロはガンプラ制作に勤しみ、クルルは寝そべって何やら端末をいじる。そこにギロロの怒鳴り声が響き渡り、我関せず、と様子見のタママ。やれやれ、と肩をすくめていたドロロが見かねて声をかけるまで間も無いだろう。
いつもの光景である。
本日は晴天なり、本日は晴天なり。
今日もケロロ軍曹の身の回りは騒がしい。
(2011.08.01)
釣って釣られて今日も晴れ。
某有名笑顔動画を舞台に、小隊メンバーに騒いでもらいました。こんな日常風景なんて、どっすか?
動画の投稿とかしたことがないので随分と適当です。が、クルルがいるんだから色々無茶きくかな。と。便利だな、この黄色いヒト。
軍曹のつくった実況動画って、結構人気がありそうな気がします。