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某蛙型侵略宇宙人についての萌え語り&日々のできごとをつれづれと書き記すためのブログ。文やら絵やら、好き放題。
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深海のプリンセス話。

なんとか無線LANの設定ができたのでUPです。パソコン使えてよかったー!
映画を見ていない方にはネタバレ&わかりにくい話かもしれません。

ご訪問&拍手ありがとうございます! 本当に嬉しいです。
なんと言ったらいいのかわからないので取り急ぎ、UPをお礼とさせていただきます。

 
 ジジッ……ジッ……という音が聞こえる度に、周囲に火花が飛び散る。
 部屋の中はほぼ暗闇だ。そこだけが妙に明るく見えるのも仕方がないことだろう。
 闇に浮かぶのはオレンジ色の火花と、黄色い体色。
 暗闇でも強い自己主張をする黄色を体色に持つケロン人――クルル曹長は、不意に聞こえた足音に眉を寄せて振り向いた。
 
その絆は、たとえ海の底でも and Yellow
 
 「何やってんだ、隊長。こんなトコで」
 ぴこぴこ、と近寄ってくるケロロに向けてあからさまに嫌な顔を浮かべ、クルルは作業の手を止めた。同時に手元の端末を操作し、現在作業中の部屋の照明を少し強めた。
 エネルギーをギリギリまで節約しているためにそれでもまだ部屋の中は薄暗いが、お互いの表情を読み取るのに苦労するほどではなくなった。そのまま防護用ゴーグルを額まで押し上げ、不機嫌な顔を隠そうともしないでケロロを上から下まで眺める。
 「……ドロロ先輩が行ったハズじゃなかったのかよ」
 ぼそり、と呟かれた言葉にケロロは苦笑した。
 「なんか、我輩ったらご心配かけちゃったよーで。迷惑かけてゴミンね? おかげさまで、大丈夫でありますよ」
 「ならいいけどよ」
 クルルはふん、とケロロから視線を逸らし、制作中の大型メカの上に座り込んで手近なところからコードを引き寄せる。
 仕事は山ほどあるんだぜ、とアピールしているようでもあり、だが、溶接作業の手を止めたのはケロロが近寄りやすくするためのようでもあり。ケロロは後者の意味にとることにして、遠慮がちにクルルの足元までやってきてクルルを見上げた。
 クルルはそんなケロロをちら、と見やり、すぐに手元に視線を戻す。
 「大丈夫だってんなら、とっとと布団に入ることだなァ。メカの準備ができるまで、さすがに今日明日とはいかねぇ。寝れるときに寝とけ、じゃねぇと手伝わせるぜ隊長」
 「ちょびっとだけ見せてほしいでありますよ……っと」
 ぴょん、とクルルの隣まで飛び上がるケロロ。
 まだ基礎の弱そうな部分は避けつつ近づくと、クルルがあちらこちらから引っ張ってきたコードを繋げていた。キーボードを叩き、何やら確認しながら集まっているコードを迷う素振りもなく繋げていく。はっきりいって、何が何やらケロロにはわからない。どうやらこの天才は今日も絶好調のようだ。
 「……相変わらずスゲーでありますなぁ」
 思わず漏れた本音だが、褒めても何も出ないぜェ、とクルルに笑われてケロロは肩を落とした。
 「んもう。別に何か欲しくて褒めてるんじゃないっての」
 ケロロが言い返すと、ようやくクルルの顔ににやり、といつもの笑みが浮かんだ。
 「くくっ……随分元気出たみてェじゃねぇか、隊長」
 「む。我輩、そんなにヘコんでた?」
 「そりゃもう」
 「ゲロ恥ずかしいであります……」
 いつもと変わらず騒ぎながらも実は何か悩んでいるようなとき、それをドロロに見抜かれるのは昔からよくあることだった。彼は他人の感情を察するのに敏い。ケロロに何かあったとき、口に出すことこそ多くないが、いつも心配そうな表情で見つめてくるのだ。ケロロ自身が意識していない程の小さな不安であってもドロロはそれに気づく。だから先程ドロロが様子を見に来た時も、やっぱりね、と納得がいった。少し気恥ずかしさが残るのはいつものことだし。
 でも、クルルにまでバレてたなんて。
 ケロロはなんとなく居心地が悪くなって、もぞもぞと足を動かす。
 目の前にいる黄色いケロン人も、他人には興味のないようでいて実は結構よくヒトを観察している。そのことはわかっている。わかってはいるのだが、それでもやはり隠していたつもりの感情を見抜かれていたと思うと、恥ずかしくて隠れてしまいたくなる。
 クルルにまでバレているとは、自分はどれだけ思いつめていたのだろうか。
 はー、と頭をかかえて長い溜息をついたところで、何かを思い出したようにクルルが笑った。
 「ちょっとだけ、耳より情報教えてやろうかぁ?」
 「ゲロ? なに?」
 「詳細は明日、もうちょい詰めて正確で確実な情報にしてから報告する。が、まぁ大外れってことは無ェだろう。端的に言うぜ、日向夏美をさらったアイツらは、宇宙の迷子だ」
 「……迷子?」
 「端的に言やぁな」
 端的すぎる言い方に、困ったようにケロロはクルルの方を見る。
 「明日に正式な報告をする、っていうのはお前さんの判断でありますから今は聞かないでおくでありますが。迷子でありますか……もしかして、もっと小さいころから」
 「おそらくなァ」
 「……そうでありますか」
 迷子。あの2人はまだ子供のようであるというのに、この広大な宇宙で迷子というのはなんとも気の毒な話だ。それに、今以上に幼い頃から迷子だというのならば、知識や記憶に偏りがあるだろう。まさかとは思うが、自分達の種族すら知らない可能性があることも否定できない。
 自分が何者で、何のために何をするのか。目的をわかってやっているのと、わかっていないでやっているのでは大きな違いがあるでありますからな……と、想定される可能性の枠を頭の中で広げつつ、ケロロは親心にも似た別の感情を覚えて表情を暗くした。
 そんなケロロに気付いているのかいないのか、クルルは繋げ終えたコード類を脇にまとめ、今度は小さな部品を組み立てながら続ける。
 「敵の本拠地、たぶんあのデカい城だろうけどよ、あの地下には長距離宇宙航行に堪えられるだけのエネルギー反応があった。おそらく奴らの宇宙船だ。ま、見た限り敵さんに技術職はいないみてェだったし、ただのオブジェになっちまってるかもしんねぇけどな」
 オブジェ。
 使い方のわからない何か。
 何者かわからない自分。
 自分の依るべきところが定まらないというのは不幸で、そしてさぞ不安なことだろう。その不安から湧き上がる寂しさは、丸きり他人事とは思えない。
 急に胸を締め付けられるような感じがして、ケロロは思わず口を開いていた。
 「あの、クルル曹長、彼らの宇宙船を――」
 「……“彼らの宇宙船を直して、彼らを元の星に帰らせてあげて欲しいであります”……ってかぁ? わかってるっつの、作戦が始まったら適当にやっとくぜェ」
 「え、な……」
 言葉を先取りされたケロロは茫然と口を開いて固まる。
 クルルは愉快そうに笑うと、自分の方を見て固まっているケロロに視線を合わせて不適な顔を浮かべた。
 「だから、わかってるっつの。どれだけアンタと一緒にいると思っている、ケロロ軍曹。アンタの考えそうなことくらいお見通しなんだぜ? ……違ってたかィ?」
 「……大当たりであります」
 ケロロが顔を真っ赤にしてうつむいたのを見て、一層楽しそうに笑い声をあげるクルル。
 熱い。顔が熱い。
 とても顔を上げられない。
 いつの間に、こんなにオミトオシな関係になっていたんだろう。
 確かに、共に過ごした時間は相当長い。作戦行動以外にも一緒に遊ぶことの多い相手だ。一方的に遊ばれたり、こちらも負けじと振り回したり、長らく共に歩んできた自覚はある。
 とは言え。
 いつの間に、こんな。
 顔に集まった熱を発散させるかのように息を吐く。
 「感謝するであります、クルル曹長」
 「よせよ、照れるぜェ」
 「うわ、なんか怖っ」
 ケロケロ、クルクル、と笑い声が響きあう。
 一通り笑って、胸に僅かに残っていた不安までもが軽くなったようだ。すっきりしたところで、ケロロはクルルを見つめた。
 「あんがと、クルル。……何か我輩にできること、ない?」
 クルルはまだ起きてるつもりかよ、と、文句を言うつもりでケロロの方を向いたが、ケロロのきらきらした目に諦めたようにため息をついた。
 「んじゃ、コーヒー。1杯だけ持ってきてくれ。あぁ、くれぐれも一緒に1杯なんて思うんじゃねェぞ、持ってきたらアンタはさっさと寝ろ。寝て、そんで明日の朝にシャキッとした顔見せにきやがれ。目覚めの1杯なら付き合ってやる。それから……その元気な顔、ガキにも見せてやんな」
 「え。え? えと、タママも、気付いてたの?」
 「あのガキは時々俺以上に空気の読めるガキだぜェ」
 「……いい部下に恵まれすぎて、我輩めちゃくちゃ恥ずかしいであります」
 結局みんなにバレてたんじゃんかよ!としばらく悶えてから、ケロロは床に散らばる制作途中の部品に蹴躓きながら部屋を出て行った。おい隊長、今壊されたら洒落んなんねえぞ、という声も聞こえていないようで、走り出した足音が小さくなっていく。
 あのフットワークの軽さなら、そう待たないうちに再びやってくるだろう。
 くく、とクルルは一人で笑う。
 コーヒーの香りにはリラックス効果がある。悩み事も粗方片付いたようだし、これでケロロはよく眠れるはずだ。
 手に持っていた部品は既に組み立て終えている。それをカチリ、と音を立ててメカにはめ込み、強度と接続を確認する。
 ――ケロロとギロロ、ドロロの仲は理解している。あの3人の仲は、長く、深く、決して切れない強固なものであることも。
 だからこそケロロは、今回もギロロのためにこんなに悩んでいる。それがわかっているからこそクルルは、まずドロロに行かせた。
 隠しているつもりだろうが、はっきり言ってバレバレなんだよ。クルルは呟く。
 あんたら3人のような長い付き合いは俺にはない。友情から生まれる深い信頼もない。
 だが、共に過ごして育まれてきた絆というものは、確かにここにある。
 ケロロが押し殺した表情を読みとれる程にはしっかりと太く育っている。
 ……それを自分だけが意識していて、ケロロがまったくわかっていなかったというのは少々癪にさわるが、まぁそれは、無事に地上に戻ってから憂さを晴らさせてもらうこととしよう。
 再び聞こえてきた軽やかな足音に口元を緩ませつつ、クルルは目の前に広げた大きな紙に設計図の初めの線を躊躇うことなく太く書き入れた。
 
 その絆は、こんな海の底でも輝くほどに力強い。






(2011.08.12)

 

 先日上げた青とセットでひとつの作品になります。微妙な違いを表現してみたつもりです。
 黄は20巻の冒頭、クルルが軍曹を心配している図から連想しました。映画では「決戦は明日の朝であります!」という速攻っぷりでしたが、そこは漫画に準拠して準備に数日かかるということにしてあります(一応青も黄も映画ベースのつもりですが、映画・漫画・小説を一気に見たせいで軽く混乱中)。
 しかし、クルルが最初から最後まで仕事しっぱなしでした。働かせすぎて申し訳ない、曹長。
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